3.取引基本契約の構成と契約条項のポイント U
- 梱包、出荷条項(Packing, Shipment)
出荷にあたり適切に梱包すべきこと、出荷に関する費用負担、輸送料、保険料、船腹手配などについて規定します。
特に国際取引では貿易条件として重要で、通常国際商業会議所が定めている「インコタームズ」(Incoterms)という貿易条件に関する規則に基づき、FOB(本船渡し)、CIF(運賃保険料込)等の条件を用いて簡便にかつ明確に規定します。その場合は所有権および危険負担の移転時期もインコタームズの定めによることになりますが、別途規定することも可能です。
なお、最新のインコタームズは2010年版で2011年から運用が開始され、FOB、CIF、CFRという日本企業が頻繁に使用するものにつき、船舶輸送に厳格に限定され航空機輸送には適用されないことが明記されています。
従って、今後、飛行機によって輸送する場合は、FCA(運送人渡し), CPT(輸送費込), CIP(輸送費保険料込)を使用すべきこととなります。
また、コンテナ輸送の場合は、FOBなどではなく、FCA等の新たな条件を用いる必要があります。
- 納入条項(Delivery)
期日に指定場所へ納入すべきことを規定しますが、上記のようなFOBやFCAといった貿易条件に基づく場合は、その定めによることになります。
ここでのポイントは、納入遅延が発生した場合またはその恐れがある場合に、どのような対策を講じるか、という点です。
- 添付書類条項(Attached Documents)
出荷/納入の際に添付すべき書類を規定します。
特に国際取引では、通関関連書類や原産地証明等、法的に必要な書類を忘れないようにします。
- 検査/受け入れ条項(Inspection, Acceptance)
納品された目的物の検査期間、検査基準、検査方法等について定めます。
そして検査合格の場合をもって、買主における目的物の受け入れ完了ということになります。
この「受け入れ」を「検収」と呼ぶことが日本では多いのですが、「検収」という概念は法律用語ではありませんので、検収と書いたからといって法的効果が直ちに生ずるわけではない点、注意すべきです。)
検査方法をどのようにするか、何を基準にするか、という点がまず重要です。
また、検査期間が経過しても買主が検査しなかった場合に見なし検収となるのかどうかもポイントとなります。
また、目的物の性質に応じ、「期限前納入」や「過納入」の場合の扱い、「誤差」の扱いについても規定すべき場合があります。
体積の非常に大きいもの等の場合は、期限前納入や過納入があると買主側の倉庫事情によっては買主側に費用や損害が発生する可能性があります。その点をリスクとして織り込むことになります。
- 特別採用条項(Special Acceptance)
特別採用とは、上記検査の結果、正規品としては検査不合格であったけれど、2級品としてならば売り物になるので、当該不合格品を売主に返品することなく、買主側の裁量で2級品として購入することを意味しています。
その際、買い取り価格につき、鑑定・評価費用、修理費用等の負担者および負担額も含めて、どのような手順や基準で決定するのかがポイントとなります。
なお、売主側から買主側に特別採用の申し出ができる旨を定める場合もあります。売主側としては返品を受けて作り直すよりもメリットがある場合があるからです。
ただ、買主側が当該申し出を承諾するかどうかは買主の任意の判断に委ねられることが多く、あまり強い権利とはならないのが通常です。
- 所有権・危険負担移転条項(Title and Risk of Loss)
国内取引ではもちろんのこと、前記の梱包、出荷条項において、貿易条件をインコタームズの定めに基づくことにすると、自動的に所有権や危険の移転時期も定まるわけですが、本条ではその特則を定めることになります。
インコタームズの場合は、例えばFOBなら船上に荷を置いた時点で移転することになりますが、特則として、例えば検査完了し引渡が完了した時点で買主に移転するとか、所有権だけは代金完済時に移転する、といった選択肢が考えられます。