代表:寺村 淳(東京大学法学部卒、日本製鉄17年勤務)
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前文の最後には、次のような一文があるのが通常です。
NOW, THEREFORE, in consideration of mutual agreements contained herein,
the parties hereto agree as follows.
(訳:そこで、本契約に含まれる相互の合意を約因として、両当事者は以下の通り合意する。)
lここで注意すべきは、「consideration」という用語です。
英米法(英国や米国系の法制度)の下では、契約をするには、「約因」と呼ばれるものが必要であって、「約因」がないと契約は成立しないという考えがあります。
上記のconsiderationがこの「約因」にあたる語で、「対価性」とも訳されます。
具体的に言いますと、売主は商品を提供するという義務を負い、買主は代金を支払うという義務を負うわけですが、それぞれの負担する義務が、対価関係になっているような場合に、対価性がある、つまり「約因」がある、と言います。
従って、「贈与契約」のように、一方のみが義務を負うような契約は、約因がないため認められない、ということになるわけです。もっとも、贈与であっても書面でなされたものは、拘束力があるとされてきていますので、通常は問題ありません。
しかし、日本の場合は、口頭による贈与契約も有効ですが、英米系の国の企業と口頭で贈与の約束をしたとしても、履行の強制はできない可能性がありますので、注意が必要になります。
この「in consideration of 〜」という一文は、対価性を明示することから通常記載されます。
上記の通り、通常の双務契約(売買など当事者双方が義務を負う契約)であれば、約因が否定されることはありませんから絶対必要という文言ではありませんが、一般的には書いておいた方が無難でしょう。
この後は、定義条項がおかれ、続いて、具体的な内容の条項へと進みます。