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英文契約の作成 リーガルチェック/審査・修正、翻訳の専門 寺村総合法務事務所

代表:寺村 淳(東京大学法学部卒、日本製鉄17年勤務)
Email: legal(at)eibun-keiyaku.net

英文販売代理店契約−X−英文契約書類型別解説Distributorship Agreement

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3.販売代理店契約の構成と契約条項のポイント 4

  • 秘密保持条項(Non-Disclosure)

    守秘義務に関する条項です。

    販売店契約は継続的関係であることから、お互いに情報を出し合うこともあり、お互いに守秘義務を負うことを規定することが通常です。

    ただ、販売店側にのみ守秘義務が課せられる場合も多数あります。
    ここにも供給者側の力が強いという事実が反映しています。

    第一のポイントは、制限を課す期間をどうするかという点です。

    期間としては、3年、5年、10年、永遠無限などがあります。
    どれが望ましいかは、秘密とされる情報の内容によります。ノウハウや顧客情報などは永遠に秘密にする必要があるでしょうが、そのような情報を開示せずすぐ陳腐化するような情報の場合、特に相互が義務を負う場合は、自らの首を絞めることになりますので、あまり長い守秘義務期間を設けるのは得策ではないでしょう。

    第2のポイントは、秘密保持義務の例外をどの程度認めるかという点です。

    その例外に関して、裁判所・官公署からの法に基づく開示要求の場合については、開示範囲を最小限にするために事前通知義務を課し情報開示を避けるための手段があれば取れるようにすること、あるいはインカメラ手続き(裁判手続きの中で公開せず裁判官だけに証拠を開示する方式)などを最大限に利用する義務などを課すことが必要となります。

    なぜならば、通常の公知等の例外と異なり、官公署等の命令があったからといって、開示される情報の秘密性は何ら失われておらず、法に従いつつもできるだけその範囲を狭めることが情報の開示者の利益となるからです。


  • 契約期間条項(Term)

    契約期間に関しては、自動更新とすることが多いと思いますが、期間満了前に交渉義務を互いに課す等の規定にとどめる場合もあります。

    最大のポイントは、特に独占的な販売店契約の場合に、どの程度の期間を当初期間とするか、という問題です。
    2年とか3年という期間を設定した場合、その期間が終了しない限り、理由なく販売店契約を終了させたり解除させたりすることはできません。
    その間、その地域における一切の販売活動を、当該販売店に委ねるのですから、供給者としては可能な限り短期の契約とし、うまく行ったら継続、という扱いにしておきたいところです。
    しかし、販売店側としては、各方面での準備や手配、小売店等との関係の樹立、顧客への浸透など、多大な努力を払う訳ですから、短期に終了したのでは元がとれません。
    これらの点、および現地代理店保護法との関係も注意しながら、契約期間を検討することになります。

    また、契約終了後においてもなお効力を有する「残存条項」の定めを置くことも重要です。
    例えば、知的財産権紛争や、製造物責任、損害賠償、秘密保持義務等は、契約が終了したからといって無罪放免されるとするのは問題があります。
    したがってそれらについて、契約終了後もなお効力がある旨を規定します。

    また、販売店契約が終了したとしても、当該終了時にまだ未履行の個別契約が残っている場合、その個別契約の処置(無効にするか、有効として最後まで履行させるか)も規定しておいた方が良いでしょう。


  • 解除条項(Termination)

    契約期間前に契約を終了させる条件を規定するものです。

    催告なしに解除できるとする項目と、債務不履行など催告の上解除できるとする項目に分ける場合もあります。

    供給者から見た場合、販売店がまともな販売活動をしない場合や、供給者の信用に傷が付きそうな場合など、解除に訴える必要がある場合は多いと思われます。

    販売店から見た場合、非独占的な契約で、最低購入義務などがない場合には、発注さえしなければ良いのですから、解除するメリットはあまりないでしょうが、供給者に対して最低購入義務を負う場合などには解除にメリットがあります。

    なお、前記契約期間条項においても触れましたが、供給者側からの解除について、現地の代理店保護法が適用される場合がありますので、注意が必要です。
    (ただし、いわゆる「代理店=代理人」の場合の方が保護の度合は厳しいようで、販売店の場合にも保護がある国は比較的少数にとどまっています。)

    なお、解除に加え「期限の利益喪失」条項を入れる場合もあります。

    これは、解除と同じような事由が発生した場合に、金銭債務者=販売店側の期限の利益を喪失させることにより、直ちに支払わせることを目的とするものです。

    代金は直ちに支払ってもらいたいが、契約解除して新たな販売店を探す手間は省きたい、という場合には、この期限の利益喪失条項を併せて規定すべきです。


  • 契約終了の効果条項(Effect of Termination)

    契約が解除又は期間満了によって終了した場合、販売店には、供給者の名称や商標などが記載されたパンフレットやカタログが残っています。
    あるいは、「当社は供給者の正規の販売店です」という宣伝文句が掲載されていることでしょう。
    本条は、契約が終了した時点で、それらの使用を直ちに終了させたり、残存する情報やカタログ等を廃棄させることを義務付ける規定です。
    また、契約終了時点の個別契約の扱いについても、ここで扱っても良いでしょう(契約期間の条項参照)。
    さらに、契約終了時点での未払い金について期限の利益が失われることも規定したいところです。


  • 輸出管理条項(Export Control)

    販売店が購入した目的物を販売店の国以外の国へ輸出する際に、許可取得等の適切な輸出手続きを取る旨を規定したものです。

    日本、米国、EU等において定められている大量破壊兵器の拡散を防止するための規制が適用される製品の場合、個別に輸出許可を取得したり、許可品ではない場合でも非該当証明を付けなければならない場合があります。それを販売店として順守することを求めるための規定です。







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