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英文秘密保持契約(NDA)契約修正例−4【寺村総合法務事務所】

代表:寺村 淳(東京大学法学部卒、日本製鉄17年勤務)
Email: legal(at)eibun-keiyaku.net

英文NDA条項検討ポイント4Non-Disclosure Agreement

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英文NDA契約例の条項修正−4


ご注意下さい!−
  ここに掲載されている英文契約案とその修正及び和訳例は、
  あくまで「参考」としてご覧ください。

A. 契約例(修正前の英文及び和訳例)こちらのPDFをご覧下さい


B. 秘密保持契約(NDA)契約修正例とそのポイント−4


NDA(英文秘密保持契約)の条項検討、続いては、第5条〜例外条項です。

<第5条>

<検討条文例>
5. The obligation herein will not apply to any INFORMATION which:
(i) is already in the possession of the Recipient at or before the time of disclosure hereunder as reasonably shown by evidence existing at the time of disclosure; or
(ii) is publicly known through no wrongful act of the Recipient; or
(iii) is lawfully received from a third party without obligation of confidence; or
(iv) is independently developed by the Recipient without use of or resort to the Confidential Information; or
(v) is furnished to a third party through the written consent of the Discloser or available to the public from a third party without breaches or default of this Agreement or confidential limitations; or
Each Party may disclose the other Party’s Confidential Information if it is required by law to be disclosed in response to a valid order of a court of competent jurisdiction or authorized government agency, provided that the Party subject to such disclosure order must provide the other Party prompt notice of the order and reasonably cooperate with the other Party’s efforts to obtain a protective order.


<和訳例>
5.本契約の義務は、以下の情報には適用されない
(i) 受領者が、本契約に基づき開示を受ける時点又はそれ以前に既に保持していた情報であって、開示時点で存在する証拠により合理的にそれが証明される場合。
(ii) 受領者の不正行為なく公知である情報。
(iii) 第三者から守秘義務を負うことなく正当に受領した情報。
(iv) 受領者が秘密情報を利用し又はそれに頼ることなく独自に開発した情報。または、
(v) 開示者の書面による承認を通じて第三者に提供された情報、または、本契約又は秘密保持の制限に違反することなく、第三者によって公知になった情報、または、
 各当事者は、管轄権ある裁判所又は権限ある政府当局の有効な命令により開示することが法律上要求される場合、他方当事者の秘密情報を開示することができるものとする。但し、当該当該開示命令の対象たる当事者は、他方当事者に対し、当該命令について速やかに通知するとともに、当該他方当事者が保護命令を受けるために合理的に協力するものとする。


<条文の考え方>

●本条は、本契約に基づく秘密情報に関する各種の義務が適用されない「例外」を定めるものです。

●この例外は、一般に「公知」「既知」「正当な第三者からの取得」「独自開発」の4つを定めるのが普通です。
ただノウハウなど事業性が高い秘密情報が開示される場合などにおいては、受領当事者の「独自開発」の主張が認められず、又は独自開発についてシビアな立証責任が課せられる場合もあります。

●第(v)号では上記の4つに加え、開示者の承認があった場合、さらに「第三者によって公知とされた情報」という定めがあります。

●さらに、最後の一文は、号番号がなく、裁判所や当局からの要求による場合の例外を定めています。


<条文修正の考え方>


●まず、本条に表題がないので、形式論として修正が必要です。ここでは「例外= “Exception”」を挿入しました。

●第(ii)号の「受領者の不正行為なく公知である情報」という表現では、「(開示後)公知となった情報」が含まれていません
起案者としては第(v)号にその意味を含めているのだと思います。

しかし、第(v)号の前半は「開示者の書面による承認を通じて第三者に提供された情報」であり、第三者に提供されたからと言って公知になるわけではありません。

また、後半は「秘密保持義務に反することなく第三者によって公知とされた情報」となっており、第三者が公知とした場合以外が除外されています。

公知となるのには、第三者の行為が介在するだけではなく、世間一般の状況の変化、認識や常識の深化などで、公知となる場合もあるでしょう。
「第三者によって公知とされた」場合に限ってしまうと、その立証が非常に難しくなることが想定されます。

従って、第(ii)号において「公知の情報又は受領者の不正行為なく公知となった情報」を追加し、この第(v)号においては、前半部分−開示者の承諾がある場合−のみを残したいと思います。

●さらに、最後の一文については、既に第4条第4項で規定済みですので、削除すべきです。
 (但し、第4条第4項でも記載しましたが、4条4項の該当部分を削除し、この第5条の最後の一文を残しても構いませんし、それが普通と思われます。)

    ★ 第(v)号で、 "through the written consent of the Discloser"という表現がありますが、通常「同意を得て」という場合は、 "upon obtaining the written consent of the Discloser"又は単に "on (with) the Discloser's written consent"が普通です。


<英文修正例>
5. Exception
The obligation herein will not apply to any INFORMATION which:
(i) is already in the possession of the Recipient at or before the time of disclosure hereunder as reasonably shown by evidence existing at the time of disclosure; or
(ii) is or become publicly known through no wrongful act of the Recipient; or
(iii) is lawfully received from a third party without obligation of confidence; or
(iv) is independently developed by the Recipient without use of or resort to the Confidential Information; or
(v) is furnished to a third party upon obtainingthrough the written consent of the Discloser.
or available to the public from a third party without breaches or default of this Agreement or confidential limitations; or Each Party may disclose the other Party’s Confidential Information if it is required by law to be disclosed in response to a valid order of a court of competent jurisdiction or authorized government agency, provided that the Party subject to such disclosure order must provide the other Party prompt notice of the order and reasonably cooperate with the other Party’s efforts to obtain a protective order.

<修正例の和訳>

5.例外
本契約の義務は、以下の情報には適用されない:
(i) 受領者が、本契約に基づき開示を受ける時点又はそれ以前に既に保持していた情報であって、開示時点で存在する証拠により合理的にそれが証明される場合。
(ii) 受領者の不正行為なく公知であるか又は受領者の不正行為なく公知となった情報。
(iii) 第三者から守秘義務を負うことなく正当に受領した情報。
(iv) 受領者が秘密情報を利用し又はそれに頼ることなく独自に開発した情報。または、
(v) 開示者の書面による承認を得て通じて第三者に提供された情報、または、本契約又は秘密保持の制限に違反することなく、第三者によって公知になった情報、または、
各当事者は、管轄権ある裁判所又は権限ある政府当局の有効な命令により開示することが法律上要求される場合、他方当事者の秘密情報を開示することができるものとする。但し、当該当該開示命令の対象たる当事者は、他方当事者に対し、当該命令について速やかに通知するとともに、当該他方当事者が保護命令を受けるために合理的に協力するものとする。




<第6条>及び<第7条>

今回は、「秘密情報の開示が、受領者にライセンスを許諾するものではない」ということと、「秘密情報の開示が受領者に知的財産権を譲渡するものではない」ということを明らかにした条項例の検討です。


<条文例>
6. No Granted License
Nothing in this Agreement is intended to grant any rights under any patent, copyright, right of layout relevant to any IC, trade secret or other relevant intellectual property right to the Recipient.

7.Intellectual Property All intellectual property rights in the Confidential Information shall be and remain the property of the Discloser. With this Agreement, the Recipient does and shall not acquire any right in or title to or license in respect of the Confidential Information disclosed to it by the Discloser.


<和訳例>
6.ライセンスの不許諾 本契約のいずれの定めも、特許権、著作権、ICに関する回路配置権、営業秘密その他の関連知的財産権に基づくいかなる権利も、受領者に許諾することを意図するものではない。

7.知的財産権 秘密情報に含まれるあらゆる知的財産権は、開示者に留保されるものとする。本契約により、受領者は、開示者から受領者に開示された秘密情報に関するいかなる権利、権限又はライセンスも取得するものではない。


<条文の考え方>

●第6条は、開示者から受領者への秘密情報の開示が、受領者へのライセンス=使用許諾となるものではないことを規定しています。契約上どこにも「ライセンスする」と書いていない場合であっても、「ライセンスしない」ことを明確にしておくことは大事なことだと思います。

●第7条は、開示者から受領者への秘密情報の開示が、受領者に対し何らかの知的財産権を譲渡したり、受領者が知的財産権を取得したりしないことを明記するものです。

●この2条については修正の必要はないと思います。

ただ、この第6条と第7条では重複している部分が多少ありますので、まず、「すべての知的財産権が開示者に留保され」ることを規定し、次に、「受領者にはいかなる知的財産権も許諾されず、また取得するものでもない」と規定すれば、次のようにすっきり1条に収まると思われます。


<第6条と第7条をまとめた例(参考)>


6. Intellectual Property Rights
(1) Any and all patents, copyrights, rights of layout relevant to any IC, trade secrets or other intellectual property rights (hereinafter referred to as the “Intellectual Property Rights”) in, under or relating to the Confidential Information disclosed by the Discloser are and shall remain the property of the Discloser.
(2) The Recipient shall in no manner obtain any right or license of or concerning anyl Intellectual Property Rights in, under or relating to the Confidential Information disclosed by the Discloser.

<参考例訳>
第6条 知的財産権
(1) 開示者から開示された秘密情報に含まれ又はそれに関連する特許権、著作権、ICに関する回路配置権、営業秘密その他のいかなる知的財産権(以下「知的財産権」という。)も、開示者の財産であり開示者に留保されるものとする。
(2) 受領者は、いかなる場合も、開示者から開示された秘密情報に含まれ又はそれに関連する知的財産権に関するいかなる権利やライセンスも取得するものではない。




続いて、保証に関する条項の検討です。


<第8条>

<条文例>
8.Warranty and Liability
(1) The Discloser is not responsible or liable for and makes no representation or warranty, express or implied, with respect to the accuracy or completeness of the Confidential Information.
(2) Either Party shall be liable for all cost and damages suffered by the other Party for the breach of any of the provisions of this Agreement made by any person to whom it has given access to the Confidential Information.

<和訳例>
8.保証及び責任
(1) 開示者は、明示にも黙示にも、秘密情報の正確性及び完全性に関して、何らの責任も負わず、またいかなる表明や保証も行わない。
(2) いずれの当事者も秘密情報にアクセスすることを許諾した者が本契約のいずれかの定めに違反したことにより、他方当事者が被った費用及び損害全部について賠償する責めを負うものとする。



<条文の考え方>
●本条では、秘密情報が正確であることや完全であることについて、開示者が責任を負わないことを明記しています。

●第2項では、秘密情報に対するアクセスを提供した者(=第三者や従業員など)が本契約に違反した場合、その違反に起因するすべての損害及び費用の賠償責任を規定しています。


<条文修正の考え方>

第2項の内容は明確とはいえません。
この定めには、受領者自身が本契約に違反した場合の責任が含まれていません。
起案者は、この部分だけ、「受領者は法人であり、違反するのは自然人である」との考え方を取っているのかもしれませんが、他の部分との整合性が取れません。
また、そもそも第三者に開示したりアクセスを許諾したりすることは、本契約を遵守してなされなければならず、かつ、第4条で、開示先の従業員、弁護士等、関連会社や下請業者(「従業員等」と定義)に守秘義務を遵守させる義務を負うとされているのですから、結果的にこれらの「従業員等」が秘密を漏洩したのであれば、それは当然受領者の違反であるはずです。
従って、ここでは、不明瞭な言い回しは避け、単純に、受領者の契約違反の場合は、全損害を賠償する、と修正しました。

<英文修正例>
8.Warranty and Liability
(1) The Discloser is not responsible or liable for and makes no representation or warranty, express or implied, with respect to the accuracy or completeness of the Confidential Information.
(2) The RecipientEither Party shall be liable for all cost and damages suffered by the Discloserother Party for Recipient’sthe breach of any of the provisions of this Agreement made by any person to whom it has given access to the Confidential Information.

<修正例の和訳>
8. 保証及び責任
(1) 開示者は、明示にも黙示にも、秘密情報の正確性及び完全性に関して、何らの責任も負わず、またいかなる表明や保証も行わない。
(2) 受領者はいずれの当事者も受領者が秘密情報にアクセスすることを許諾した者が本契約のいずれかの定めに違反したことにより、開示者他方当事者が被った費用及び損害全部について賠償する責めを負うものとする。


<追加>

●なお、この保証に関する別の例としては、情報を「現状有姿」で提供するだけであること、またUCC(米国統一商法典)上の「商品性」、「特定目的への適合性」及び「(特許権、著作権及び営業秘密に基づく権利を含む)第三者の権利の非侵害」という売主側の責任を負わない旨を明記する場合も多く見受けられます。

●以下の参考条文は、これらを記載し、さらに、間接損害・派生損害についても責任を負わない旨を定めたものです。

   ★なお、以下の参考条項例で大文字で記載されている部分がありますが、これは、UCC(米国統一商法典)に「これらの責任を負わない旨を定める場合には目立つように=大文字で契約に記載する」という条件があることによるものです。


<参考条文例>
The Recipient assumes all risk, known or unknown, incident to its use of the Confidential Information, and the Discloser shall have no liability of any kind to the Recipient or any third parties arising out of such use. THE RECIPIENT ACCEPTS THE CONFIDENTIAL INFORMATION IN “AS IS” CONDITION. THE DISCLOSER MAKES NO REPRESENTATIONS OR WARRANTIES, EXPRESS OR IMPLIED, WITH RESPECT TO THE CONFIDENTIAL INFORMATION, AND DISCLAIMS ALL WARRANTIES INCLUDING, WITHOUT LIMITATION, THE WARRANTIES OF MERCHANTABILITY, FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE AND WARRANTIES OF NON-INFRINGEMENT OF THE RIGHTS OF THIRD PARTIES (INCLUDING, WITHOUT LIMITATION, RIGHTS UNDER PATENT, COPYRIGHT AND TRADE SECRETS). THE DISCLOSER SHALL NOT BE LIABLE OR OBLIGATED IN ANY MANNER FOR ANY INDIRECT, CONSEQUENTIAL DAMAGES EVEN IF ADVISED OF THE POSSIBILITY OF SUCH DAMAGES.

<参考例の和訳>
受領者は、受領者による秘密情報の使用に付随する全ての既知及び未知のリスクを引き受けるものであり、開示者は、受領者又は第三者の当該使用に関し、一切の責任を負わないものとする。受領者は、秘密情報を「現状有姿」の状態にて受け取るものである。開示者は、明示にも黙示にも、秘密情報に関して何らの表明も保証も行わず、商品性特定目的への適合性及び(特許権、著作権及び営業秘密に基づく権利などの)第三者の権利の非侵害を含め、全ての保証を否認する。開示者は、いかなる形であろうとも、またたとえ当該損害の発生可能性について通知を受けていたとしても、一切の間接損害、派生的損害について、責任を負わないものとする。




(NDA5に続く〜作成中)

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