代表:寺村 淳(東京大学法学部卒、日本製鉄17年勤務)
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ソフトウェア・ライセンス契約とは、コンピュータ・ソフトウェア(通常はプログラムとマニュアルなどの関連書類を総称してソフトウェアといいます)を、コンピュータ等の電子計算機上において使用することを許諾する契約をいいます。
ライセンス契約には、このほか、ノウハウや特許・実用新案権のライセンス契約(実施許諾契約)や商標のライセンス契約(使用許諾契約)などがあります。
(*なお、広い意味では営業権の許諾契約もライセンス契約といえますが、営業権の許諾がどのような内容であるかによって、商標やノウハウの実施・使用許諾契約である場合もあり、あるいは、単に販売代理店契約である場合もありますので、ここでは別物として考えたいと思います。)
また、サブライセンス権付き(再使用許諾権付き)のライセンス契約とは、ライセンスを受けた当事者(ライセンシ―といいます)が、再度、第三者にライセンスをすることができる、という内容の使用許諾契約です。
例えば、海外の許諾権者(ライセンサーといいます)から許諾を受けた日本のライセンシーが、日本国内の最終エンドユーザー(顧客、消費者)に個々のソフトウェアの使用許諾をする、という関係の場合、ライセンシーが最終エンドユーザーに許諾する権利が「再使用許諾権」ということになります。
上の例でいくと、海外から単にパッケージされているソフトウェアが輸入され、それをそのまま、つまり海外のライセンサーがそのままエンドユーザーに使用許諾するという関係ではなく、ライセンサーから許諾を受けた日本のライセンシーが、そのソフトウェアを日本で(日本語化して)複製し、それを日本国内のエンドユーザーに対して使用許諾する、という関係にする場合、上記の「再使用許諾権付き」の「ライセンス契約」が締結されることになります。
上記の通り、再使用許諾権が付いたライセンス契約においては、ソフトウェアの日本国内での販売権をライセンサーから許諾されたと同じようなビジネスとなりますので、「販売代理店契約(販売店契約)」類似の関係になるとも言えます。
しかし、「販売代理店契約」は、あくまでも、パッケージングされているソフトウェアを一つの『商品』として、販売代理店が「販売」していくのに対し、「再使用許諾権付きライセンス契約」の場合は、「販売」ではなく、ライセンシーが使用許諾をしていく、という関係になります。
この二つの契約の大きな違いは、ライセンシーがライセンサーから商品を購入するのか、あるいは、ライセンシーが自ら「複製」して使用許諾していくのか、という点です。
前者の販売代理店契約の場合、ライセンサーの「儲け」は、ライセンシーへの「販売」からもたらされるわけです。
しかし、後者のライセンス契約の場合、ライセンサーの「儲け」は、ライセンシーが複製した数に応じた「ロイヤルティ=使用許諾料」からもたらされることになります。
そして、そのような契約形態に起因して、ライセンシーがどの程度複製し再使用許諾したのか、ということを、ライセンサーが正確に把握していく必要が生じるわけです。
販売代理店契約であれば、供給側は、自ら卸売った商品数で利益が自動的にわかります。
しかし、ライセンス契約では、ライセンシーの報告を信じるしか、その複製本数を把握する手段がありません。そのため、ライセンス契約上、ライセンシーの帳簿に対するライセンサーの監査権の規定がなされる、といったことに繋がってくるわけです。
本解説では、以下、このような「再使用許諾権付き=サブライセンス権付き」のライセンス契約について、解説していきたいと思います。