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英文契約の作成 リーガルチェック/審査・修正、翻訳の専門 寺村総合法務事務所

代表:寺村 淳(東京大学法学部卒、日本製鉄17年勤務)
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インコタームズ2010 −英文契約書条項例解説Incoterms 2010

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1.インコタームズ(Incoterms) 2010 (2011発効)について


国際商業会議所が制定しているインコタームズの新版が、2011年1月1日から発効しています。

国際契約における「貿易条件」は、長期・長距離の輸送と保険の付保が絡むことが多く、国内取引の場合より契約で取り決めるべき内容が多くなってしまいます。
それをすべての契約でいちいち規定する煩雑さを避けるために、このインコタームズが制定されているわけで、契約上「インコタームズに規定されたFOB条件による」と書いておけば、その意味が一義的に明らかになる、というメリットがあります。

ただし、インコタームズは条約ではありませんから、インコタームズを利用しようとする場合、契約上「インコタームズによる」という言及をすることが必要です。

改訂版である「インコタームズ2010」では、従来から(特に日本企業が絡む契約で)多く用いられてきているFOB、CIF、CFRといった貿易条件については、引き渡し時期と危険負担の移転時期とが「荷が本船の手すりを越えた時」ではなく、「荷が本船の船側に置かれた時」または「荷が本船の船上に置かれた時」と変更された点が重要です。

また、それ以外については、コンテナ輸送に対応した貿易条件が定義された点がとても重要です。
これまでは航空輸送やコンテナ輸送の場合であってもFOBなどの港での積み下ろしを前提とした貿易条件を便宜的に採用していましたが、これからは、そのような便宜上の措置も必要なくなるでしょう。

この新しいインコタームズについては、ビジネス・ロー・ジャーナルの2011年4月号に詳しく解説されていますので、ご参照ください。

2.インコタームズ上のFOBと、米国法上のFOB


インコタームズに関連して、インコタームズ上のFOBと米国法上のFOBの相違点を書いてみようと思います。

上記1.でも書いたとおり、インコタームズは、国際商業会議所が制定した貿易条件等に関する「定義」です。
その中で、FOBは「本船渡し」とされており、売主は船積港において荷を本船の船上で引き渡すまでの義務を負い、その時点で商品の危険負担が買主に移転することになります。

そして買主は荷揚げ港までの運賃や保険などすべての費用を負担することになります。

これがインコタームズのFOBなのですが、米国法上のFOBは意味が異なります。

「改正米国貿易定義」では6種類のFOBが定義されており、インコタームズと同じ意味で用いる場合は、「FOB Vessel」と書くか、あるいは「インコタームズの定義による」と書く必要があります。

それ以外の米国貿易定義上のFOBには、

「指定国内出荷地点における指定国内運送人積込渡し条件」
「指定国内出荷地点における運賃込み指定国内運送人積込渡し条件」
「指定国内出荷地点における運賃控除指定国内運送人積込渡し条件」
「指定国内輸出地点における指定国内運送人渡し条件」
「輸入国指定地点持込渡し条件」
があります。

従って、相手が米国企業の場合や米国法を準拠法とする契約の場合、FOBと規定するだけで安心せず、その内容を吟味することが必要となります。